■もんたにゆ65号 1988冬 「冬の響」2016年05月26日

■もんたにゆ65号 1988冬 「冬の響」

もんたにゆ65号 は 「冬の響」

うっかり冬山の扉を開けてしまった山行。
そういう経験ありませんか?

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北岳に登ろうとやってきた僕達は、
雪の舞うバットレスで思いもよらず苦戦していた。

現れた雪と氷の世界。
ホワイトアウトした天地に何度かルートを失い、
ベルグラが一面に張り付いた緊張の岩場で、
アイゼンのつま先がキリキリと悲鳴をあげていた。

渦巻く風雪は頂稜部が相当荒れていることを物語っていた。
それでも僕達はザイルを伸ばしたが、
やがて下降を決意した。

ビバーク地点でも寒気はナイフのように突き刺さった。
ツエルトで寝た僕は、明け方の寒さで眠ることができず
自分自身の吐く息で、内側は真っ白に凍り付いていた。

夜が明けると、
マリンブルーの空に
白い北岳が赤く染まって浮かび上がった。

僕達に敗北感は無かった。
昨日たどったルートを仲間と指差しながら
目の前に現れた美しい冬山にただただ感動していた。
                              1980年晩秋

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※バットレス(英語):
建築用語で”控え壁”のこと。日本で第二の高峰、南アルプスの北岳(3,193m)には、山を支えるような大きな岩壁帯があり、その形からこの岩壁帯を”北岳バットレス”と呼んでいます。

※ベルグラ(仏語):
岩に氷が薄く張り付いた状態。冬の道路で言えばブラックアイスバーンのようなもの。見た目は普通に見えてもツルツルでアイゼンを付けていてもスリップすることがあります。


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